注目

Rolnd VX-55 スプリングリバーブが掛からなくなったので修理した

<事件発生>

購入してから3週間後、電源を切り忘れて就寝。
翌日、部屋の中に微かに漂う下町の町工場のような匂いで気づいた。

午後2時頃、現場で重症者発見。
肝心のリバーブだけが効かない。
それ以外は問題ない。

また、そう来たか。
レトロ楽器愛好家界隈のマーフィーの法則。
「肝心な部分からぶっ壊れる」

兎にも角にも絶対に治す!

<初動捜査>

筐体開封。
とりあえず、そのままの状態で状況確認。

リバーブタンクに直接、音声信号を繋ぐと微かだがリバーブが掛かった音が鳴る。
リバーブタンクは死んでいない。

匂いの元を辿ろうとしたが、残り香は残っていたが匂いが発生するパーツを発見できず。
また、特に異常に高温になっているパーツも発見できず。

<見当たり捜査>

サービスノートをググって落とす。
電源ボードの裏を見たら、プラス15Vを作るトランジスタ(2SD2012)辺りが焦げていた。
電源ボードから伸びるワイアからプラスマイナス15Vの電源の存在を確認。
ノートと同じ15V前後の値。

トランス直下の2つある電解コンデンサのうちの1本は元の3300uFから4800uFになっていた。
電解コンデンサは劣化すると容量が抜けると思っていたが、逆に増えていた。
ネットで調べると、電圧をかけることがほとんど無かったコンデンサは絶縁層の厚みが減ってきて容量が増幅、耐圧不足になっている可能性があるらしい。

<聞き込み>

週末、八潮の秋月へ直行。ゴミ屋巡りをしながら帰宅。
焦げていた基盤のトランジスタと電源周りの電解コンデンサ、作ろうと思っているエフェクターの部材を購入。
絶好のタイミングで平台に置かれた値引き品の中に、お目当てのトランジスタ(2SD2012)があった。
レジの人に通常の品と何が違うのかと訊いたら、錆びてたり、くすんでいるからだと言ってた。
使えるかもしれないし使えないかもしれないと。
まあ、使えるだろうけど、これを追加したことによって不具合の要因を増やすのも面倒くさいので通常の品を購入した。
(後日、在庫箱の中にだいぶ前に八潮の秋月のレジにて「これ、いりますか?」と言われて、よく分からずもらった50個入りの未開封の袋に入ったトランジスタ(KSD2012)を発見。2SD2012と同等品だった。。。)

帰宅後、早速、装着。

リバーブ鳴らず・・・


<証拠の収集>

トランジスタの後ろに隠れていた抵抗の周りが真っ黒に焦げているのをトランジスタを外した時に発見。
抵抗を測ったら11Ω。
サービスノートには56Ω。だいぶ違う。
取り外す際に砕け散ってしまった。

対になるように配置されたマイナス電源用のトランジスタに繋がる抵抗は実測28Ω。
抵抗のカラーコード見ても27Ω。
しかも、抵抗はパラレルで2つ表記されているのに共に基板の穴は半田で埋められ1つしかなかった。

サービスノートを確認したら色々違う。この理由は果たして?


推理1:サービスノートの通り抵抗が並列の場合、(56*56)/(56+56)=28Ω。その抵抗を1つで済ました。
推理2:Rolandの公式サイトで落とせる操作マニュアルを見るとワット数は52W、持っている筐体の背中には40Wと表記されている。消費電力の削減に伴い、その分、抵抗の数を減らした。
推理3:ネットで拾ったサービスノートと異なるパーツ構成になっていることもたまにあるという。現にメインボードのオペアンプ周りのセラミックコンデンサはスルーホールは空いてはいたが省略されていた。

昔に作った回路から直接音声を辿って確認できる道具で、ミキサーボードから送られてくる信号を辿ると、オペアンプ「TA-7200P」から音声が出力されていない。

「TA-7200P」のピンをチェックする
- 音声信号はある(pin8)
- 電圧は15V来ている(pin3)
- 音声出力がない(pin2)

こいつだ!

この40年以上前のオペアンプ「TA7200P」はRoland RE-201でも使われているらしく、それなりに需要があると思い、誰かが現代の部品で置換してはいないかとググったが目ぼしい情報がヒットせず。
とあるフォーラムにて同じことを考えてたイギリス在住の人が自分で質問して自分で答えてた。

"Looks like a TDA2030 would replace it - maybe just needs a couple of 100k resistors to set the operating point of the input and the pins re-forming to suit, or wire it up to a header. "


5PIN仕様の「TDA2030」を使ってゴニョゴニョすればできるかもと。

回路図を見ると他のIC等との絡みもなく、リバーブタンプへミキサーから送られてきた音声を増幅して渡すOPAMPがあれば良いだけのように思える。



同じ10 PINを持ったOPAMPでなくても、ワイアで別基盤に引っ張って戻せば、現行品のOPAMPで賄えそうな気がするがどうなのだろうか?

春めいてきたし、音楽を作りたい願望が沸々と湧いてる状態。
更に、OPAMP探究の旅に出るのは面倒なので現物をネットで購入。
届いたものは未使用品だと言うが、壊れたTA7200Pよりもだいぶくすんでいて動かないかもなあと思ったがアサインしたら復活。
枯れた心にリバーブ音が鳴り響いた。

<修理箇所>

電源周りの電解コンデンサ(3300nF 35v 電解コンデンサ x 2など)
正負電源生成用トランジスタ前の抵抗(27Ω 1wに変更)
正電源生成用トランジスタ(2SD234-O => 2SD2012)
スプリングリバーブに入力前のOPAMP(TA7200P)交換

ついでにスピーカー出力用のOPAMP周りの電解コンデンサーも交換しようと思ったが、
取り外してチェックすると、それほど劣化していないようだったので交換せず。

<事件の全容>

  1. 長年放置されていた機材に長時間にわたって負荷を掛けた。
  2. 片方の劣化した電解コンデンサが悲鳴を上げた。
  3. 想定以上の電力が片方の抵抗を襲った。
  4. 抵抗が焼損
  5. そのままの勢いで低周波電力増幅用のトランジスタを経て「TA7200P」へ印加。
  6. 定格以上の電圧が流れてオペアンプを破損


ど素人の推理。
どうだろう?

故障直後の状態でプラス・マイナス15vが正常にメインボードに出力されていたのは未だに謎。


<対策>

何十年も前の機材は、前の所有者がどんな使い方をしたのか、どんな環境でどれくらい放置したのか分からない。
・掃除ついでに基板を確認。目視凝視。本格的に使う前に電源を入れた状態で匂い、発熱などをチェックする。
・電源周りの大きな値の電解コンデンサは漏れがなくても一旦外して容量をチェックする。本来の容量との差が大きければ交換する。
・様子を見ながら少しづつ使用する時間を伸ばしていく。そうすることで電解コンデンサは徐々に復活することもあるらしい(眉唾)。その際、掛ける電圧を半分にするともっといいらしい。
・1980年代初期より古い機材は、購入直後は使えたとしても予め覚悟しておく。


---  以上、どこかの物好きのお役に立てればとここに記す 


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ベネズエラのLEE PERRY「pachyman」


      

 

 
やってることは昔ながらのこだわりの音の世界って感じだけど、現代風にアップデートされたアレンジも利いていていつまでも聴いてられる。スペイン語の歌も新鮮。仕事しながらでも全然気にならない。むしろ捗る。

古いホンダ車に腰掛けて胸毛をちら見せする、いつの時代よって感じのこのアルバム。
2023年にリーリースされたアルバムの中で、よく聴いたアルバムの一枚。
DUB好きは一聴の価値ありよ。

pachyman - Switched-On (2023)


 



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